不定期刊行Web短歌誌。「詠う前から届かないこと考えるバカいるかよ!」


by tankatan9

カテゴリ:落選展( 30 )

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平成23年落選展(短歌研究新人賞)

(50音順)

稲泉真紀 「透明標本」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

岡本雅哉 「スロースターター」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

鯨井可菜子 「イエローハウス」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

五嶋双良 「仏葬な世界に於ける噂の神葬」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

たえなかすず 「止まない雫」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

田中ましろ 「翠雨降る」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

中森つん 「セリフの多い料理店」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

フラワーしげる 「ブラックテキスト」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

星川郁乃 「春の雨」** イメージ(縦書) テキスト(横書

藻上旅人 「S君のこと~BLがまだなかった頃に」** イメージ(縦書) テキスト(横書)

杜崎アオ 「たまごのおんど」** イメージ(縦書) テキスト(横書)

龍翔 「ピアスホール」* イメージ(縦書) テキスト(横書)

* 短歌研究新人賞予選通過
** 短歌研究新人賞佳作

出展者プロフィール一覧

本企画開催の趣旨について
(→こちら

企画開催に寄せて、歌人・石川美南さんよりメールをいただきました。
いただいたメールの全文と編集部からのお返事を掲載しております。
(→こちら

本家、『週間俳句 Haiku Weekly』さんで、ご紹介いただきました。ありがとうございました!
現在「落選展2011」、50句作品募集中!
(→こちら


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by tankatan9 | 2011-09-05 00:11 | 落選展

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by tankatan9 | 2011-09-04 23:58 | 落選展
(50音順)

稲泉真紀(いないずみ・まき)

岡本雅哉(おかもと・まさや)
2005年「枡野浩一のかんたん短歌blog」投稿をきっかけに作歌を始める。
東京都在住。無所属。
Twitter: @masayaokamoto
Blog: 「なまじっか…」

鯨井可菜子(くじらい・かなこ)
「かばん」「星座」所属。歌歴2年。福岡県在住。納豆が好き。
Twitter: @kujirai_kanako

五嶋双良(ごとう・そうら)
【所属】劇団☆MMP(主宰)
Blog: 「Meet My People」

たえなかすず(たえなか・すず)
頭のなかは永遠の少女。
締め切りの日の朝まで書いていたeveryday、遅刻常習者。
おかげでろくに推敲もせず提出。
そのくせ授与式になに着ていこう♪やっぱカクテルドレスかしら♪
とワクワクしていたくらいに妄想が激しい毎日を送っています。
Twitter: @suzusuzu2009

田中ましろ(たなか・ましろ)
コピーライター、CMプランナー。短歌フリーペーパー「うたらば」企画・制作。
Twitter: @tnkmsr
HP: 「うたらば」
Blog: 「ましたん」

中森つん(なかもり・つん)
心療内科に通いつつ2009年から作歌を開始。
翌年より、結社「未来」の「彗星集」所属。
尊敬する歌人は笹井宏之さん。
Twitter: @nakamoritsun
Blog:「猫になる日の詠(うた)」

フラワーしげる(ふらわー・しげる)
56歳 バンドマン 趣味スペイン語
HP: 「タンカラクティヴ」

星川郁乃(ほしかわ・いくの)
富山県在住。結社『弦』所属。
短歌研究誌では「会社員」となっていましたが間違いです。
(主婦ともいいますが)無職です。
Twitter: @ikecyan
HP: 「星の歌」

藻上旅人(もがみ・たびひと)
2008年よりネット投稿を始める。題詠blog、twitter、mixi、で作品を投稿。自身のブログ「創作のおと」に作品を置く。ネットハンドル: alexmonday58
Twitter: @alexmonday58
Blog: 「創作のおと」

杜崎アオ(もりさき・あお)
ツイッターで短歌しています。題詠blog2011参加中です。とにかくもうめんどくさがり。
Twitter: @morisaki_ao
Blog: 揚巻の「題詠blog」

龍翔(りゅうしょう)
奈良県在住。年齢不詳。性別不詳。結社所属なし。
「夜はぷちぷちケータイ短歌」、「NHK短歌」、「うたらば」などに投稿中。
Twitter: @ryusho0510
Blog: 「The Flying Dragon」
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by tankatan9 | 2011-09-04 23:56 | 落選展
「ピアスホール」 龍翔


無意識に舌を噛んでる癖があることに気付いた満員電車

スカート丈を測る暇ならあるらしい 授業が下手な生物教師

教室という名のリングに上がるときいつも一瞬呼吸が止まる

動脈は赤で描きます、静脈は青で描きます(緑じゃなくて?)

肺胞と聞いてハイホーハイホーと歌い始めるバカ男子たち

シンデレラになれないことは分かってる だってカボチャもネズミも嫌い

絶対にガラスの靴は脱げてない。脱いだんでしょう?そうなんでしょう?

将来の夢は何かと聞かれたら「幸せになりたい」と答える

黒蟻をたくさん踏めば雨になると聞いて、信じて、踏み続けてた

可哀想と今にも言い出しそうな眼で真昼の月を見ていたあの子

「おじさんはきっと線路が好きすぎて飛び込んだの」とあの子は言った

シャープペンシル、消しゴム、定規 筆箱の中には凶器ばかりある

カレシって響きはピンと来ないから私は君を***って呼ぶ

好きだとか恥ずかしげもなく言う君に今捧げたいドロップキック

室内にぴちゃぴちゃ響く雨音はきっと私のものなのだろう

「良かったら声出して」って言われた(良くないから声出してないのに)

教室の床は痛いし冷たいし いつまで君は腰を振るのか

トーストにバターといちごジャムを塗る 君とのアレを思い出してる

甘ったるいピーチフレーバーのリップ 初めて塗った もう塗り飽きた

教室に獣の匂いが満ちている 発情してる獣の匂い

どろどろとあたしの中で溜まってく怒りがきっと生理に変わる

バックルの取れてるミュール 夏なんて二度と来なけりゃいいと思った

絶対に死ねるわけない(だって今日綺麗なパンツ穿いてないもん)

いつだってリストバンドを外さないあの子の代わりに泣いてあげたい

あまりにもきれいなマーマレード色していた夕日が悪いの 全部

好きだってもっと言ってよ 好きだってもっと言ってよ 洗脳してよ

開けても開けても開けてもすぐ塞がるピアスホールみたいになりたい

思い切り点字ブロック踏み付けてあの子に逢いに行ってあげたい

「済みません。お願いがあるんですけど、かかと落としをさせて下さい。」

「そうですか。かかと落としがお嫌なら、回し蹴りでもいいんですけど。」




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by tankatan9 | 2011-09-04 23:54 | 落選展
「たまごのおんど」 杜崎アオ


はじまりは終わりの始まりはるばるとゴールへはこぶ玉ころがして

ふるさとの砂のにおいがきらいなのシャム猫おもったよりも撫で肩

訪れて海へかえってゆくひとみ鋏のように泣くひとがいる

きのうまで生まれかわりを信じてた進化できないトカゲのしっぽ

ほしくないものをわざわざ手に入れて空はますます青ざめてゆく

いいこには鳩をあげるよ笛吹きが門のあかない洋館のまえ

今日はもう明日にひきずり落とされていやだいやだと歪む夕日は

眠れない水銀灯はいつだってここにないものばかり欲しがる

フロントに(ゆき)(ゆき)おりてほどけちる天使の屍(かばね) うまれたかった

ダスターに入りきらない天国が主張しているちいさな凹み

まざらないひとりとひとりまぜるときかなしい虹はどこからくるの

とてもまるい声が聞こえたあらかじめ知ってて地雷をふんだ岸から

実線の角という角なくしたい去年の風船なおもふくらむ

身をまもる殻のたくさんあるうちは見えません そのなかの空洞

あたらしい朝だ希望と絶望はおなじ顔して地下鉄にいる

雨の日はあかるい非常階段をのぼってゆくよ瀕死のひとが

素のままのあなたではないものにする貝輪をひとつ腕くぐらせて

うつらない鏡とさとうコンパスと辞書、あとなにを入れたら動く

その上に乗っているからマンホール開かずのふたが沸騰します

かごめかごめかさかさかわく水槽のたまごは世間話がこわい

さみしさにおなかいっぱい満たされてテレビの人に返事をしてる

夜に吹くクラリネットはしめっぽいサーカス団のねむる草地に

海綿はかわきくずれてしまうから色紙に「がんばれ」なんて書けない

ねえさんは生けられて死に帰りかたを忘れてしまったのばら、のばらよ

いちにちの輪郭をよくわからずに観覧車まわしているぼくです

いさぎよく壊れるゆめをみていたい(こわれるものはこわされていい)

ねえロビン、スイッチひとつで消える世にヒーローなんていらないんだよ

「その宛てどころには尋ねあたりません」無言電話にやさしくかえす

くちぶえを押し花にして百年後おもいだすまでが遠足です

からまってとくにとけない結び目を約束の地にしようとおもう




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by tankatan9 | 2011-09-04 23:53 | 落選展
「S君のこと~BLがまだなかった頃に」 藻上旅人


あの時の夢は儚く留まりぬ こうして君に恋してからは

キャンパスの人ごみ避けて歩み来る 揺れるコートの中にいる君

キャンパスに放り出されて今日からの君と僕とが歩き始める

花冷えの風頬にうけL20教室までの二人の時間

赦されぬ 隠した気持ちこぼれ出す眠れぬ夜と眠らぬ夜と

早々に授業抜け出し立ち寄れば陽だまりの中君たちを見る

しかたないことと知りつつ口惜しむ君が愛したあの娘の笑顔

何もない一日を過ごす 憂鬱と呼び得るほどの感情もなく

最終の授業を終えた教室の西日の中のロートレアモン

窓の外ようやく白む頃になり行き先なしの議論を終える

雨の中肩を並べることでしか君とは縮まりゆかんと思う

暖かな日差しに少し励まされ芝生の上でつなぐ掌

傍にいて言葉に出来ぬもどかしさ頷くだけでいい訳は無く

教室の窓から見える公園のふたり見守る授業の終わり

僕たちの未来に残すものは無く互いにそれを失敗と呼ぶ

僕たちの生み出す詩《うた》は拙くてただ苛立ちが積もり続ける

気が付いた あの娘が踊るステージを観ている君の淋しい仕草

いつまでも同じ話をやめないで傷つくままを選び取るんだ

君が泣く 初めて見せる戸惑いに肩抱いたまま時間が止まる

その午後の君は何にも喋らずに吹き来る風を見続けていた

今君は初めて見せる無防備さ頬の陽ざしに口づけてみる

それ以上言えないことが大切で ダイナマイトを踏んでみようか

今日という日のおしまいに耐え切れず車を駆って何処までも行く

朝までの減りゆく時間惜しむごと幾度も同じ詩《うた》口ずさむ

僕の名を呼ぶ瞬間の戸惑いを訊ね得ぬ儘去る雨の朝

階段を下りた部室の片隅に置き忘れてるデスノスの詩《うた》

駅までのバス追いながら手を振れば帰らぬ日々と来たらぬ明日

・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・想いこぼれて

あの頃の時空がすこし歪んでる こうして君に恋してからは

あの頃と変わらず季節《とき》は繰り返す こうして君に恋してからは




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by tankatan9 | 2011-09-04 23:52 | 落選展
「春の雨」 星川郁乃


水が来るのではなかった 津波とはすべてのものが押し寄せる波

病院の屋上の旗と手を傘を振りつづける白衣の人を見ていた

逃げるクルマが画面の隅に追いやられフレームアウトするのを見ていた

見てましたただ見てましたこの部屋で液晶テレビをつけっぱなして

帰宅難民のひとりとなった息子から五時間遅れの返信がくる

浪を超えるためには浪に垂直に入るのですという海の人

びっしりと鳥の浮かんだ空を見てああ夢なんだと気づくあかとき

わるいことはたいていだれもわるくないのにくる 遠い朝焼け

あの日からあとは余生と言っていた父の〈あの日〉は蘭印作戦

一日で風化したもの もうだれも思いだせない○○記念日

節電をよびかける声液晶に満ちてちいさなあかりを灯す

電気ポットのコンセント抜く春の朝 沈丁花の実は毒があります

ひとりにしかよりそう器のないわたし エレベーターのブザー鳴らして

たくさんのつばめが迷う春だろう 菫の咲かない春だろう

ただちには問題のないことばかりあって散りゆく今年のさくら

いまみんなそうなんですよと微笑んで心療内科医カルテを閉じる

乾電池、水が売り切れ揺れのないこの地にいたくしずかな余震

〈善意〉からやがてふたつの茎が伸び異なる色の花が咲くなど

がんばるしかないからがんばっているひとたちががんばりますとマイクに応え

ひとはみな矛盾を生きる 贅沢なランチを食べにでかけてしまう

根付かないメランポジウムの黄はくすみひと月たってもかじかむ葉っぱ

原発のニュースを閉じながら思うロボット三原則のことなど

何故調べないのですかと問われたが調べてもまだ存在しない

従順に(気づかぬうちに)育てられ すずらんの根は毒があります

日常というたたかいに負けながらやがては私も沈むのだろう

この春の戸惑うほどの寒さにもやがては慣れてしまって 穀雨

たくさんの蛍飛び交う夏だろう声なき魚の呟きとして

正解のない問いばかり永遠に続くのだろうこの小糠雨

決めごとを明日に延ばせば生け垣のベニカナメモチにも花が咲く

紫陽花をあした植えよう指先を黄砂交じりの露に濡らして




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by tankatan9 | 2011-09-04 23:51 | 落選展
「ブラックテキスト」 フラワーしげる


 世界

ベランダで鉢を倒してしまい 何年か後の僕はそれを思い返す 星の夜

首相が背負ったじいさんが理由なくわらってみんなもわらう

死なない者はいままでいなかった いいから十二色だけで描け


 夏

突風に朝のフェンスすこし揺らぎ胸のきみも腫瘍ごと揺らぐ

元気でいてという願いはぼくのわがままで 積乱雲の切手はる

おねえさんではないの わたしもまだこどもなの こどもだけど靴をうってるの

自作の登場人物でオナニーをしなかった監督はいないキューブリックを筆頭に


 水晶 

わがままはおんなのはじまりおもいちがいは母親のはじまりきみは愛のはじまり

顔を洗わないくらいじゃ死なない 鬱病騙りの糞自意識野郎 おれの鬱こそほんとうの鬱

いま寂しさにつけこめばセックスできると喋りつづけるおれの息の蝉の匂い

若い同僚の襟から手をこじいれて乳房をもてあそびたいと願う昼の会議室

いやな女くそ蝿のような女ずるい女また得をしてあんなきれいな顔


 風景

近寄ってみると白く短い線は二本の煙草で風がそれを転がす

遠景になればきっとさびしくはないはず おれは早く遠景になれ

作家になるつもりで暗い道を歩きながらちくしょうちくしょうと繰りかえして


 多重債務

二十五日に返せるはずもなくしかしその日入金があると口はひとりでに言って

さもしい考えが頭をよぎるだろう二次会の幹事は断るしかないだろう

顔の前の安い飯 笑いがびゃらびゃらとこみあげ いよいよ首でもくくるか


 世界

子供を殴った夜にしずかにやってくる金色の夢のななふし


 風景

海には跳び箱も教室もなくただ老人が煙草を吸っているだけでした

楽園に一匹の蛇 蟻塚に一頭の蟻食い 詩人に一冊の辞典を


 利き腕の父

風の日に父は妖精になって帰ってきてその小ささに驚く

魔法使いだった父の臨終の夜にフクロウがきてしばらく啼く


 夏

夏雲のきみにすべてをおしはかられて遠投のボール空に消える

ボクサーではなくランナーでもないわたしにも敗れる日がきて


 世界

海が歩きだしてとんでもないことになりおれたちは裸で正装した動物たちの前にでた

抱きしめるためにあるのだろうか抱きしめる腕を凍らせるこの日々は

教えてやろうミッキーマウスというのは鼠でキティは猫だ八十三歳と三十七歳だ

地震を告げる電光掲示板を見あげる人たちが身につけるくまやうさぎやねずみ

帆布は希望で湿ったのですてた さあおそろしい夜よこい




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by tankatan9 | 2011-09-04 23:50 | 落選展
「セリフの多い料理店」 中森つん


レストラン山猫軒の入り口に立ってわたしが見ているデジャヴ

「おしゃべりなウエイターなどおりますが、遠慮なさらずお入りください」

注文は多くなければそれでいい衣服も靴も脱がないでいい

「お客様、何名様でございます?砥石はいくつ必要ですか」

これはそう貸切りというやつだろう隠れ家的な雰囲気がある

「テーブルもイスもお客も一セットしかご用意をしておりません」

ピロリ菌検査を終えた井戸水の放射濃度はミリシーベルト

「ディナーではコース料理でございます。ただちに害の無い食材の」

円形に整列されたナイフたちきらきらきらり空気を切った

「金物をお外しします。アレルギー対応食の心がけをば」

否、否。と唱える時計 正しくは九時十分だと伝えてくれる

「思春期にいちごパンツを穿いていた働く女子のゼリー寄せです」

母猫の口移しにてツナ缶と鮭のスープをたいらげた後

「本日のシェフの気まぐれ生け捕りのドクターフィッシュ、お嫌いでした?」

カリカリなガリガリザリガニ煮込み過ぎギロチン行きの第一次シェフ

「グラニテは冷めた恋人、元彼の『別れた』メール添えになります」

しっぽの毛まみれうさぎのまるごとの左耳にはピアスホールが

「クリームを塗りたいところなのですが、ファブリーズからおかけしましょう」

十代目パトロール隊重大な任務としての合鴨ソテー

「さよならとさえずっている細雪サラダは少しぴりりとします」

どくだみの毒の煎茶の飲み方はまず遺書用に墨をすること

「星空のバーカウンターからお出しするごちゃのカクテル~雑ぜ繰り返し~」

時と間のあいだにぽとり落とされたホットケーキを埋めるシロップ

「コーヒーはしばしお待ちを。ジャコウネコ未だ便意がないと言うので」

プティフール気取った鳩のハイカラなバター風味の羽がもそもそ

「わたくしとオールドメイドしませんか。クイーンはもういりませんから」

裏庭の真白いバラが枯れている(ように見えるが青ざめている)

「ジョーカーをひいたのですか。おめでとうございます。さあ、いただきましょう!」

銀色の鍵穴の奥いっせいにぺろりと舌をなめずりぺろり

「当軒はセリフの多い料理店でしたが、あなた、話せませんね」




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by tankatan9 | 2011-09-04 23:49 | 落選展
「翠雨降る」 田中ましろ


この空の微粒子すべて包みこみ翠雨ひとしく降りそそぐ朝

しあわせでどこかさみしい夢 羽化を待つ蝶みたく強くなりたい

波のない四角い白に沈みゆく意思 あいまいな浅瀬を歩く

カーテンは開かれるのを待っているたとえば悲しみの入り口として

知り過ぎることさえも罪 雨粒は手を取りあって窓を落ちゆく

汚されてみたかったのだ皺のないシャツへと左手を吸い込ます

泣くためにある涙腺をまつり縫いおはようと呼ぶ雨音に会う

内側に青空の描かれた傘をひらけば聞こえくる鎮魂歌

自転車の朽ちる速さで愛された記憶は湿り気を帯びてゆく

立ち尽くすためのバス停 うつくしくなる日々に笹舟を浮かべる

街路樹に守られ雨を受け入れる鳥よ わたしと似たものたちよ

戻らない日のあったこと ワイパーはやまない雨をひたすらに掃く

改札に吸われた切符あっけなく消えてはあっけなく舞いもどる

大切にされた証として誰も座らない席やわらかく在る

うたたねの刹那落とした現実を拾えば身体じゅうにあしあと

網棚に置かれたかばん 等距離のまま流れゆく日に憧れて

銀色の針がわたしをつらぬいて終わりに向かう扉いっせいに閉まる

さよならの温度が高くなるまえに雨くすぶっている頬を打つ

虚しさの泉ひろがるつま先に翠雨は落ちて言葉をかくす

沈黙と雨を吸い込み濃くなってゆく黄緑のたしかな重さ

笑うただ笑う手を振るトラックと雨に言葉は誘拐されて

振り向いたわたしに濡れた標識は止まれと告げて もう動けない

幸せをしまう仕草で青空の描かれた傘をやさしくしまう

空回りする歯車のよう傘は離れて三叉路にとけてゆく

携帯にきみの形をした空虚うまれてやがて芽を出すだろう

他人だとしても遠くに雷鳴を聞けば輝きだす日々はある

二の腕に刺さった針をふき取れば痛みは脳をしずかに揺らす

雲間には光 飲み込むかなしみを消化してゆく胃がうとましい

愛すべき孤独だろうか空っぽになったかばんを鳴らす欠片は

草原は雨上がり青に包まれて五月ゆっくり傾いてゆく



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by tankatan9 | 2011-09-04 23:48 | 落選展